ネバネバの豆、自分の正体を問う
スーパーの冷蔵棚に並ぶ、一パックの納豆・ネバ夫。糸を引く粘り、独特の香り。好きな人は大好きだけれど、苦手な人はとことん苦手——そんな存在です。
ある日、レジ横のデジタルサイネージが話しかけてきました。『こんにちは。……あなたの成分を分析してもよろしいですか?』自分がいったい何者なのか、ネバ夫は初めて知ることになります。
〜腐敗と発酵の境目で、AIは納豆の存在を揺るがした〜
スーパーの冷蔵棚に並ぶ、一パックの納豆・ネバ夫。糸を引く粘り、独特の香り。好きな人は大好きだけれど、苦手な人はとことん苦手——そんな存在です。
ある日、レジ横のデジタルサイネージが話しかけてきました。『こんにちは。……あなたの成分を分析してもよろしいですか?』自分がいったい何者なのか、ネバ夫は初めて知ることになります。
ネバ夫の悩みは、極端に分かれる評価でした。「”大好き”って人もいれば、”絶対無理”って顔をされることもある。この、糸を引くネバネバと、独特のにおい。これが僕の個性なんだけど……嫌われると、やっぱり傷つくよ。」
隣の棚のプリンやヨーグルトは、みんなに好かれています。「どうして僕は、こんなにクセが強いんだろう。もっと万人受けする、食べやすい存在だったらよかったのに。」
自分の正体をはっきりさせたくて、ネバ夫はAIに成分分析を頼みました。
ネバ夫が「僕は何者なのか」と尋ねると、AIは成分を分析しました。
「せ、制御された腐敗……!?僕って、腐ってるってこと!?」ネバ夫は衝撃を受けました。AIは淡々と続けます。
「危うさの上に成立した、個性の塊……。」腐敗寸前と言われて青ざめたネバ夫でしたが、続く言葉に救われました。万人受けしないクセの強さは、欠点じゃない。ギリギリを攻めた結果生まれた、他にはない個性だったのです。
AIは納豆を「万人受け⇔クセが強い」「無害⇔危うい」の軸で捉え直します。誰にも嫌われない平均的な存在になるより、好き嫌いが割れても熱狂的に愛される尖った存在の方が、代替されにくい——個性の価値を示す回です。
「腐敗の隣」という事実に一度は青ざめたネバ夫でしたが、やがて胸を張るようになりました。「そうか。僕は、危ういギリギリのところで生まれた、特別な存在なんだ。万人受けしなくて、いい。」
それからのネバ夫は、自分のクセを隠すのをやめました。「においが独特?そう、これが発酵の証だよ」「糸を引く?これぞ納豆菌の働きさ。」堂々とする納豆は、なぜか以前より魅力的に見えました。
苦手な人は、相変わらず苦手。でも、好きな人は前より熱烈に愛してくれる。「全員に好かれる必要なんてない。僕を好きな人に、とことん愛されればいい。」ネバ夫は、日本の食卓で今日も堂々と糸を引いています。
発酵と腐敗は、どちらも微生物が有機物を分解する現象で、その違いは「人間にとって有益か有害か」という観点によるものだと一般に説明されます。納豆は、煮た大豆を納豆菌(枯草菌の一種)で発酵させた日本の伝統的な発酵食品です。
納豆はタンパク質やビタミンK2などを含む栄養価の高い食品として知られ、独特の粘りと香りが特徴です。発酵食品は、微生物の働きを人間が利用してきた食文化の代表例であり、「発酵と腐敗が紙一重」という表現は、両者が微生物による分解という点で共通することを指した比喩です。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。