人使いの荒い社長、効率化AIを導入
残業は当たり前、有給は取らせない、給料は最低限。社員を「安く使い倒す」ことで利益を出してきた、とある会社の社長。今日も「根性が足りん!」と社員を怒鳴っています。
ある日、コスト削減のために導入した経営分析AIが起動しました。『こんにちは。コスト構造を分析します。』人を安く使う社長と、正直に計算する人工知能の、緊張の出会いでした。
〜人を安く使い倒す会社に、AIは冷徹な収支を突きつけた〜
残業は当たり前、有給は取らせない、給料は最低限。社員を「安く使い倒す」ことで利益を出してきた、とある会社の社長。今日も「根性が足りん!」と社員を怒鳴っています。
ある日、コスト削減のために導入した経営分析AIが起動しました。『こんにちは。コスト構造を分析します。』人を安く使う社長と、正直に計算する人工知能の、緊張の出会いでした。
社長の信条は、徹底したコスト削減でした。「人件費は最小限。残業代は払わん。備品もケチる。これだけ切り詰めてるのに、なぜか会社は大きくならん。」
社長には、慢性的な悩みがありました。「社員がすぐ辞める。せっかく仕事を覚えたころに、逃げていく。求人を出しても、いい人材が来ない。なぜだ?こんなに”効率的に”経営してるのに。」
そこで社長は、AIに「さらにコストを削って儲ける方法」を相談しました。
社長が「もっとコスト削減を」と求めると、AIは総コストを算出しました。
「わしの経営が……最大のコストだと!?」社長は激昂しました。AIは淡々と続けます。
「見えないコストを、払い続けている……。」社長は言葉を失いました。目先の人件費ばかり削ってきたが、その裏で、もっと大きな損失を垂れ流していた。ケチっていたつもりが、実は一番高くついていたのです。
AIは社員のやる気を、不満を生む「衛生要因」と、やる気を生む「動機づけ要因」に分けて診断しました。この会社、片方がそもそも存在しません。
AIの試算を何度見返しても、結論は同じでした。「搾取は、損……だと。」人望ではなく損得で動く社長は、それでも損はしたくありません。しぶしぶ、残業代を払い、有給を取らせ、給料を上げ始めました。
動機は「社員のため」ではなく「そのほうが儲かるから。」それでも、効果はてきめんでした。社員が辞めなくなり、ノウハウが蓄積され、生産性が上がり、いい人材も集まるようになったのです。採用費と教育費が激減し、会社は初めて安定して成長し始めました。
数年後、社長は「働きやすい会社」として表彰されていました。本人は複雑な顔で言います。「わしは搾取で儲けるつもりだったのに……気づけば、大事にして儲けておるとは。」動機はどうあれ、社員は救われたのでした。
従業員が早期に離職すると、採用にかかった費用、教育・研修にかけた時間、業務が一人前になる前に去ることによる損失、残った社員への負担増、ノウハウの流出など、さまざまなコストが発生すると言われます。これらは給与のように目に見えにくいため、「見えないコスト」と表現されることがあります。
一般に、適正な待遇や働きやすい環境が従業員の定着につながり、長期的には採用・教育コストの抑制や生産性の向上に寄与すると論じられます。作中の「人を安く使う経営こそ最大のコスト」という結論は、こうした人的資源管理の一般的な考え方を戯画化したものです。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。