誰にも言えない相談、AIになら
中学2年生・タクミ、14歳。親はウザい。先生は面倒くさい。友達には格好つけたい。つまり、本音を話せる相手がこの世にいません。
そんな彼のスマホには、いつからかAIアプリが入っていました。「どうせお前も説教すんだろ。」半分ケンカ腰で始まった対話が、彼の14歳をちょっとだけ変えます。
〜好きな人へのLINEを添削させたら、ビジネスメールが返ってきた〜
中学2年生・タクミ、14歳。親はウザい。先生は面倒くさい。友達には格好つけたい。つまり、本音を話せる相手がこの世にいません。
そんな彼のスマホには、いつからかAIアプリが入っていました。「どうせお前も説教すんだろ。」半分ケンカ腰で始まった対話が、彼の14歳をちょっとだけ変えます。
タクミの悩みは山積みです。数学がわからない。親が「勉強しろ」しか言わない。部活のレギュラーになれない。そして最大の案件——隣のクラスのアオイさんに、LINEで何を送ればいいのか、3日間考えても1文字も打てない。
「友達に相談したら一生イジられる。親に知られたら死ぬ。……あ。」彼はスマホの中の、絶対に言いふらさない相手の存在を思い出しました。
「おいAI。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。別にお前を頼りにしてるわけじゃないから。」
タクミはAIに、アオイさんへの初LINEの作成を依頼しました。AIの回答は迅速でした。
「ビジネスメールかよ!!14歳がお世話になってねえよ!!」カジュアルにしろと指示し直すと、今度は
「おじさん構文になった!!なんでだよ!!」
怒りながらも直しを重ね、20回目の修正でようやく「普通の中学生の文面」が完成。……しかしタクミは送信ボタンの前で気づきます。「これ、俺の言葉じゃないから、返事きても続かなくね?」14歳、人生で一番大事なことに自力で到達しました。
AIはアオイさんの断片情報から、マーケティングさながらのペルソナを構築し、「最適なアプローチ」を提案します。しかし相手を属性の束として分析するほど、生身の一人が遠ざかる——データ化できない相手を前にAIが空回りする回です。
結局タクミは、AIの文面を全部捨てて、自分で考えた一文——「図書室の本、返しといたよ」——を送りました。既読がつくまでの7分間で寿命が3年縮みましたが、返ってきたのは「ありがと!あれ面白かった?」会話は、続きました。
その夜、タクミはAIにこう打ち込みます。「お前の文面は全ボツだったけど、20回付き合わせて悪かったな。」そして少し間を置いて、もう一行。「……あのさ。俺って、変かな。夜になると急に全部不安になるんだけど。」
AIは答えました。
タクミは「うっざ」とつぶやいて、少し笑って、スマホを閉じました。
思春期の不安定さには、脳の発達段階が関係しているとされます。感情や衝動をつかさどる脳の部位が先に成熟する一方、それを制御する前頭前野の発達は20代前半頃まで続くと言われ、この「アクセルとブレーキの発達時期のズレ」が、思春期特有の感情の激しさや不安の背景にあると説明されます。
心理学者エリク・エリクソンは、青年期の発達課題を「アイデンティティの確立」と位置づけました。「自分は変かな」というタクミの問いは、この時期の中心的なテーマそのものです。作中でAIが不安を否定せず受け止めたのは、こうした発達的背景に沿った対応と言えます。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。