万能の天才 vs タスク管理
絵画、彫刻、建築、解剖学、飛行機の設計まで。何でもできた男、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
しかし歴史は知っています。彼が完成させた絵画は、驚くほど少ないことを。そんな彼の工房に、時空を超えてAIアシスタントが導入されました。天才 vs タスク管理。戦いの火蓋が切られます。
〜万能の天才、タスク管理AIに「納期16年超過」と怒られる〜
絵画、彫刻、建築、解剖学、飛行機の設計まで。何でもできた男、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
しかし歴史は知っています。彼が完成させた絵画は、驚くほど少ないことを。そんな彼の工房に、時空を超えてAIアシスタントが導入されました。天才 vs タスク管理。戦いの火蓋が切られます。
レオナルドの朝は快調です。「今日は絵を描くぞ」と筆を取った3分後、「待てよ、鳥の翼の構造が気になる」とスケッチを始め、その5分後、「そもそも空気とは何か」とメモ帳に走り書き。気づけば日が暮れています。
依頼主からの催促の手紙は山積み。「あの、修道院の壁画、いつ頃…」「例の肖像画、妻が楽しみにしておりまして…。」
「私は怠けているのではない。すべてが繋がっているから、すべてを調べているだけだ。」彼はAIにこう頼みました。「私の仕事を、整理してくれたまえ。」
AIは工房中のメモを読み込み、タスク一覧を生成しました。
「随分と失礼なリストだな!」しかしAIは容赦しません。
「あ、あれは完成させないことに意味があるのだ!唇の影がまだ…」
「記録するな!!」
ムキになったレオナルドは、画像生成AIに自分の画風を学習させて対抗します。が、出てきた絵の解剖学的な正確さに沈黙。「……ふん。腕の筋肉の付き方が2ミリ甘いな。」天才、負け惜しみだけは一流でした。
AIは238件のタスクを緊急度と重要度で4象限に整理。ところがレオナルドの場合、あらゆる探究が本人にとって「重要」なため、第2象限(重要だが緊急でない)が渋滞し、いつまでも手がつかない——「全部大事」が招く機能不全を可視化します。
数週間後、AIは238件のタスクを分析し終え、静かに報告しました。
レオナルドは目を見開きました。「べーたばん……いい響きだ。つまり私は遅れているのではなく、更新し続けているのだな!」以来彼は催促の手紙にこう返すようになりました。「作品は順調にアップデート中です。」
依頼主たちの怒りは1ミリも収まりませんでしたが、本人はかつてなく晴れやかな顔で、今日も新しいスケッチを始めています。なお、モナ・リザの進捗は今も85%のままです。
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)は絵画・彫刻・建築・解剖学・工学など多分野で業績を残した「万能人(uomo universale)」の代表格です。一方で、完成させた絵画は十数点程度と極めて少なく、多くの作品や研究が未完のまま残されたことでも知られます。
「モナ・リザ」は1503年頃に着手されたとされ、彼は晩年まで手元に置いて筆を入れ続けたと伝えられます。作中の「進捗85%から動かない」「永遠のβ版」は、この完璧主義と多動的な探究心をデフォルメしたものです。散らかったタスクの正体は、時代を先取りしすぎた好奇心でした。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。