補欠の少年、データの神様に出会う
少年野球チームの万年補欠、ケンタ君(小6)。誰よりも野球が好きなのに、試合にはほとんど出られません。それでも毎日、誰より早くグラウンドに来て、素振りを続けています。
ある日、コーチが導入した動作解析AIが、選手のデータを取り始めました。『こんにちは。パフォーマンスを分析します。』野球が大好きな少年と、正直すぎる人工知能の出会いでした。
〜好きだけが取り柄の少年に、AIは残酷な数値を出した〜
少年野球チームの万年補欠、ケンタ君(小6)。誰よりも野球が好きなのに、試合にはほとんど出られません。それでも毎日、誰より早くグラウンドに来て、素振りを続けています。
ある日、コーチが導入した動作解析AIが、選手のデータを取り始めました。『こんにちは。パフォーマンスを分析します。』野球が大好きな少年と、正直すぎる人工知能の出会いでした。
ケンタ君の悩みは、才能の壁でした。「野球が大好きだ。誰にも負けないくらい練習してる。なのに、試合には出られない。同い年のタケシは、練習してないのに、オレよりずっと上手い。」
努力しても、なかなか結果が出ない。「才能って、あるのかな。オレには、ないのかな。こんなに好きなのに、報われないなんて。」好きな気持ちと、伸びない現実のギャップに、ケンタ君は苦しんでいました。
そこでケンタ君は、AIに「自分に野球の才能があるか」を尋ねました。
ケンタ君が「オレに才能はあるか」と尋ねると、AIはデータを返しました。
「やっぱり……オレ、才能ないんだ。」ケンタ君の目に涙が浮かびました。ところがAIは、分析を続けます。
「伸び続ける力なら……オレが、トップ。」ケンタ君は顔を上げました。「今の上手さ」だけを見れば才能はない。でも「伸びていく力」を才能と呼ぶなら、自分は誰にも負けていなかった。才能の定義そのものが、一つじゃなかったのです。
「才能ゼロ」と告げたAIが、なぜか人事の配属フレームで再分析を始めました。3つの円が重なる場所に、続ける理由があります。
AIに「伸びる力はトップ」と言われたケンタ君は、目の前の結果に一喜一憂するのをやめました。「今すぐ上手くならなくてもいい。オレは、伸び続けてる。それが、オレの才能なんだ。」
それからのケンタ君は、他人と今の実力を比べるのをやめ、「昨日の自分」と比べるようになりました。少しずつ、でも確実に、彼のプレーは上達していきます。半年後、ケンタ君はついにレギュラーの座をつかみました。
試合に出られるようになっても、ケンタ君は変わらず、誰より早くグラウンドに来て素振りを続けています。「才能があるかどうかじゃない。好きで、伸び続けられるか。それがオレの野球だ。」少年のバットは、今日も一番長く振られています。
能力を固定的なもの(生まれつきの才能)と捉えるか、努力や学習で伸ばせるもの(成長するもの)と捉えるかで、その後の取り組みや成果が変わりうる、という考え方があります。心理学者キャロル・ドゥエックが提唱した「マインドセット(fixed/growth)」の枠組みとして広く知られています。
現時点の能力だけでなく、伸び率や継続性に目を向けることは、学習や競技の動機づけの観点でも重要だと語られます。作中の「今の実力ではなく、伸びる力を才能と捉える」という視点は、こうした成長志向の考え方に基づく演出です(個人差があり、才能の要素を否定するものではありません)。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。