接客の達人、販売AIと組む
セレクトショップの店員、みさきさん。お客さんに本当に似合う一着を見つけるのが、何よりの喜びです。今日も鏡の前で、お客さんと一緒に真剣に悩んでいます。
ある日、店舗にAIレコメンドシステムが導入されました。『こんにちは。販売を最適化します。』客想いの店員と、売上至上の人工知能の出会いでした。
〜客に本当に似合う服を選びたい店員と、売上を追うAI〜
セレクトショップの店員、みさきさん。お客さんに本当に似合う一着を見つけるのが、何よりの喜びです。今日も鏡の前で、お客さんと一緒に真剣に悩んでいます。
ある日、店舗にAIレコメンドシステムが導入されました。『こんにちは。販売を最適化します。』客想いの店員と、売上至上の人工知能の出会いでした。
みさきさんの信条は、顧客本位でした。「お客さんには、本当に似合う服を着てほしい。予算オーバーなら、無理に高いものは勧めない。似合わないなら、正直にそう言う。」
でも、店員である以上、売上ノルマもあります。「今月、数字が足りない。でも、数字のために、似合わない高い服を勧めるのは違う。この板挟みが、つらい。」お客さんへの誠実さと、売上のプレッシャーの間で、みさきさんは葛藤していました。
そこでみさきさんは、AIに「売上を上げる接客」を相談しました。
みさきさんが「売上を上げる接客」を求めると、AIは販売戦略を返しました。
「でも、それって……似合わなくても、高いものを勧めろってこと?」みさきさんが眉をひそめると、AIは続けます。
「単一の取引……。」みさきさんは引っかかりました。「でも、似合わない服を売ったら、お客さんは二度と来てくれない。目の前の売上は上がっても、長い目で見たら、お客さんを失うだけじゃない?」AIは一瞬の沈黙ののち、分析をやり直しました。目先の一回だけを見ていたことに、AI自身が気づいたのです。
AIは当初「1回の取引」で最適化し、抱き合わせ販売を勧めます。しかし顧客生涯価値(LTV=生涯にわたる取引の総和)で見ると、信頼を損なう販売は再来店を失い長期では損。時間軸を延ばすと最適解が反転する回です。
みさきさんの指摘を受けて、AIは評価軸を「一回の売上」から「顧客生涯価値」へと修正しました。「なるほど。長期の再来店・口コミまで含めると、”似合う服を正直に勧める”ほうが、総売上は高くなります。」みさきさんは微笑みました。「でしょ?それがわたしのやり方なの。」
それからのみさきさんは、AIを「似合う服を、予算内で見つける」ために使いました。膨大な在庫から、そのお客さんに本当に似合う一着を素早く提案する。正直な接客はそのままに、精度だけが上がったのです。
お客さんは「あの店員さんは信頼できる」と、何度も足を運ぶようになりました。目先のノルマより、長く愛される店へ。「一回売るより、一生通ってもらう。それが、本当の売上だから。」みさきさんの接客は、今日も誠実です。
顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)は、一人の顧客が取引を続ける期間全体でもたらす利益の総和を指すマーケティングの指標です。一回の取引額だけでなく、再来店やリピート、口コミによる波及まで含めて顧客の価値を捉える考え方として広く用いられます。
短期的な売上の最大化が、顧客満足や信頼を損なうと、再来店や紹介が減り、長期的にはかえって損失につながる場合があると指摘されます。作中の「一回売るより、一生通ってもらう」という結論は、このLTVの考え方に基づく演出です。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。