池の白鳥、効率化の波に出会う
公園の池にぷかぷか浮かぶ、白鳥型のスワンボート・スワ子。カップルや親子を乗せて、ペダルの力でゆっくり、のんびり池を巡るのが仕事です。
ある日、管理事務所のAIが、園内設備の稼働分析を始めました。『こんにちは。運用効率を分析します。』のんびり屋のボートと、生産性を追う人工知能の、のどかならぬ出会いでした。
〜のんびり漂う白鳥型ボートに、AIは生産性を求めた〜
公園の池にぷかぷか浮かぶ、白鳥型のスワンボート・スワ子。カップルや親子を乗せて、ペダルの力でゆっくり、のんびり池を巡るのが仕事です。
ある日、管理事務所のAIが、園内設備の稼働分析を始めました。『こんにちは。運用効率を分析します。』のんびり屋のボートと、生産性を追う人工知能の、のどかならぬ出会いでした。
スワ子の毎日は、のんびりでした。時速数キロ、いや、下手をすると止まっているような速さで、池をゆらゆら漂う。「わたしの仕事って、ただ浮かんで、ちょっと進むだけ。速くもないし、どこかに着くわけでもない。」
周りを見れば、世の中は効率化ばかり。速い乗り物、便利なサービス。「みんな、もっと速く、もっと生産的に、って頑張ってる。それに比べて、わたしはこんなにのんびりしていて、いいのかな。」スワ子は、自分の”生産性のなさ”が気になっていました。
そこでスワ子は、AIに「もっと効率的になる方法」を相談してみました。
スワ子が「もっと効率的になりたい」と言うと、AIは生産性の観点から分析を始めました。
「え、でも……お客さんは、対岸に急いでるわけじゃなくて。」スワ子が戸惑うと、AIは分析を続け——そして、あるデータに気づきます。
「わたしの、遅さが……仕様?」スワ子は驚きました。速く、効率的にすることばかり考えていたAIが、ここでは「遅いことこそ価値」と結論を覆したのです。急ぐ必要のない時間を、ゆっくり味わうために、スワ子は存在していたのでした。
AIは当初スワンボートを「移動手段」と誤認し、速度・回転率で評価します。しかし利用者の本当の目的は「ゆっくり過ごす体験。」効率化すべき対象を取り違えていた——生産性の物差しが常に正しいとは限らない、と示す回です。
AIに「遅さは仕様」と認められたスワ子は、自分ののんびりさに自信を持ちました。「わたしは、速くなくていいんだ。むしろ、ゆっくりだからこそ、価値があるんだ。」
それからのスワ子は、効率を気にするのをやめ、堂々とのんびり漂うようになりました。乗ったカップルは、ゆれる水面を眺めながらおしゃべりを楽しみ、親子は、ゆっくり進む時間そのものを味わいます。「急がない時間を、たっぷり提供する。それがわたしの仕事。」
世の中がどれだけ効率化しても、スワ子の池だけは、時間がゆっくり流れます。「みんな、たまには、目的地のない時間も必要でしょ?」今日もスワ子は、誰かのかけがえのない”何もしない時間”を、のんびり乗せて漂っています。
常に効率や生産性を追い求める風潮に対して、意図的に何もしない時間や、ゆっくり過ごす時間の価値を見直す考え方が、近年さまざまな形で語られています。休息や余暇、目的のない時間が、心身の回復や創造性に寄与すると論じられることもあります。
レジャーやレクリエーションにおいては、目的地への到達や速度よりも、その場での体験や滞在の質が価値になる場合が多くあります。作中の「遅さは欠陥ではなく仕様」という結論は、体験そのものを目的とする活動における価値の考え方を象徴的に描いたものです。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。