百獣の王、最新テクノロジーに手を出す。
サバンナの真ん中で、ライオンはあくびをしていました。王者の風格。しかしその内心は、誰も知りません。
そんなある日、観光客が落としていったタブレットが、彼の前足の下で光ります。『こんにちは。何かお困りですか?』——百獣の王と人工知能の、運命の出会いでした。
〜AIに「草を食べろ」と提案されてキレるまで〜
サバンナの真ん中で、ライオンはあくびをしていました。王者の風格。しかしその内心は、誰も知りません。
そんなある日、観光客が落としていったタブレットが、彼の前足の下で光ります。『こんにちは。何かお困りですか?』——百獣の王と人工知能の、運命の出会いでした。
ライオンには悩みがありました。「毎日狩りをするのが、正直しんどい。走るの暑いし、シマウマは年々足が速くなってる気がする。」
しかも百獣の王ともなれば、弱音は吐けません。群れの前ではどっしり構え、ハイエナには睨みを利かせ、常に「王の顔」を維持しなければならない。「たまには誰かに、狩りの段取りとか任せたい…。」
そこに現れたのが、何でも答えてくれるというAIでした。「よし。お前を余の軍師に任命する。」
ライオンはさっそく、狩りの効率化をAIに命じます。数秒後、AIは自信満々に答えました。
「……は?」ライオンの尻尾がピタリと止まりました。「余に、草を、食えと?」AIは悪びれもせず続けます。
「ハイエナと同じにするなァァァ!!」サバンナに王の咆哮が響き渡りました。AIは学習しました。『メモ:このユーザーは効率よりプライドを優先する。』
追い打ちとして、AIはSWOT分析まで提出してきます。利休編の「正論資料」と同じく、正しすぎて逆に腹が立つ、という笑い。
狩りの相談は二度としないと決めたライオンでしたが、ある機能に目が留まります。音声生成AI。「……お前、雄叫びも作れるのか?」
それからのライオンは毎晩、AIと雄叫びの調整に励みました。「もっと低音を響かせろ」「最後に余韻を残せ」「雨の日用のしっとりバージョンも作れ。」完成した『究極の咆哮(リバーブ付き)』を岩山のスピーカーで流すと、サバンナ中の動物が震え上がりました。
本人は木陰で昼寝をしながら、その様子を満足げに眺めています。狩りは相変わらず失敗続きですが、威厳だけは過去最高を記録しているそうです。
ライオンの狩りの成功率は、実際におおよそ20〜30%とされ、ネコ科としては高めですが確実からは程遠い数字です。作中でAIが「成功率2〜3割」と指摘したのは事実に基づいています。そして狩りを担うのは主にメスで、オスは群れ(プライド)の防衛が主な役割。「王なのに狩りが下手」という設定は、生態としても概ね正確です。
体重維持に必要な1日の食事量はオスで約7kg、メスで約5kgと推定され、大きな体を維持するだけでも楽ではありません。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。