冷戦中の親子、AIを審判に立てる
リビングで睨み合う、父ちゃんと高校生の息子。進路のことで口論になり、売り言葉に買い言葉。今や、口もきかない冷戦状態です。
そんな二人が、たまたま同時に、家のAIスピーカーに問いかけました。「なあ、どっちが正しいか、こいつに判定してもらおうじゃないか。」『こんにちは。争点を分析します。』意地の張り合う親子と、公平な人工知能の、緊張の出会いでした。
〜どっちが正しいか白黒つけたい親子に、AIは勝敗の外を示した〜
リビングで睨み合う、父ちゃんと高校生の息子。進路のことで口論になり、売り言葉に買い言葉。今や、口もきかない冷戦状態です。
そんな二人が、たまたま同時に、家のAIスピーカーに問いかけました。「なあ、どっちが正しいか、こいつに判定してもらおうじゃないか。」『こんにちは。争点を分析します。』意地の張り合う親子と、公平な人工知能の、緊張の出会いでした。
親子の喧嘩は、進路をめぐるものでした。父は「安定した道に進め」、息子は「やりたいことをやる。」どちらも一歩も譲りません。「あいつが折れれば済む話だ」と、互いに思っています。
「俺は親として正しいことを言ってる」「僕は自分の人生を生きたいだけだ。」二人とも、自分が”正しい”と信じて疑わない。だからこそ、勝負がつかない。「とにかく、どっちが正しいか、はっきりさせたい。」意地と意地がぶつかり、着地点が見えなくなっていました。
そこで二人は、AIに「どっちが正しいか」の判定を求めました。
親子が「どっちが正しいか判定しろ」と求めると、AIは意外な答えを返しました。
「勝者はいない、だと?」二人が戸惑うと、AIは続けます。
「同じ、気持ち……?」父と息子は、思わず顔を見合わせました。勝ち負けを競っていたけれど、AIに言わせれば勝者はいない。そして対立の根っこには、心配と、信頼されたいという、同じ愛情があった。争う相手だと思っていたのは、実は味方だったのです。
AIは親子の対立を「表面の主張(ポジション)」と「本当の関心(インタレスト)」に分けます。ポジション(安定vs挑戦)は対立するが、その奥のインタレスト(相手を思う気持ち)は共通。争点を掘り下げると和解の糸口が見える回です。
AIに「勝者はいない」「根っこは同じ愛情」と言われた親子は、毒気を抜かれました。「勝ち負けじゃ、なかったのか……。」父がぽつりと言いました。「お前の将来が、心配だっただけなんだ。」息子も、しぶしぶ口を開きます。「俺は……父さんに、認めてほしかったんだよ。」
初めて、本音がこぼれました。勝ち負けを争っていたときには言えなかった言葉です。「安定か挑戦か」の二択で睨み合うのをやめ、「どうすれば息子の挑戦を、親も安心して応援できるか」を、一緒に考え始めました。争いが、対話に変わった瞬間でした。
完全に意見が一致したわけではありません。でも、二人はもう、敵同士ではありませんでした。「どっちが正しいか、じゃなかった。どうすれば、二人とも納得できるか、だったんだ。」冷戦は終わり、リビングに、久しぶりの会話が戻ってきました。
交渉や対立の解決を扱う分野では、表面的な「立場(ポジション=こうすべきという主張)」と、その背後にある「利害・関心(インタレスト=本当に望んでいることや理由)」を区別して考えるアプローチが知られています。ハーバード流交渉術などで紹介される考え方で、立場だけで争うと対立が固定化しやすいとされます。
対立する主張の奥にある本当の関心に目を向けると、双方が納得できる解決策(両者の利害を満たす第三の案)が見つかりやすくなると言われます。作中の「勝敗ではなく、根っこの気持ちに目を向ける」という展開は、こうした立場と利害を分ける考え方に基づく演出です。
※ この物語はフィクションです。実在の人物・団体・生きものの見解ではありません。DATA COLUMN は公開時点の一般的な知見に基づいています(編集方針)。誤りのご指摘はお問い合わせへ。