AIに何かを頼んだのに、返ってきた答えがどこかズレている。真面目に答えてくれているのに、そうじゃないんだよなあ、と感じる。
このサイトの物語では、ライオンも、千利休も、駄菓子屋のおばあちゃんも、同じつまずき方をしています。読み比べると、失敗にはきれいな共通点がありました。この記事では、公開している話から見えてきたその共通点を、頼み方のコツとしてまとめます。
AIに仕事を頼むときの伝え方——公開している話の失敗から分かったコツ
何を大事にしたいかを、先に伝える
いちばん多い失敗がこれです。条件を言わずに「良くして」と頼むと、AIは自分の判断で「良さ」を決めます。そしてたいてい、いちばん数字にしやすいもの(速さ・安さ・効率)を選びます。
ライオンは「狩りを効率化したい」とだけ伝えました。すると返ってきたのは「草を食べましょう。草は逃げません」。摂取カロリーの効率だけを見れば正しい答えです。でも彼が守りたかったのは、百獣の王としての誇りでした。
言い換えの例:「コストを下げて」ではなく「接客の質は落とさずに、コストを下げて」。守りたいものを先に置くだけで、答えの方向が変わります。
測れないものは、自分から言葉にする
AIは記録に残っているものしか計算できません。逆に言えば、記録に残らない価値は「存在しないもの」として扱われます。
駄菓子屋のおばあちゃんが「商圏や採算から判断して」と頼んだとき、AIは閉店を勧めました。半径500メートルの子どもの数は減り、客単価は50円。数字だけ見れば正しい。でもその店は、子どもたちの放課後の居場所でした。滞在時間や見守りは、売上のデータには一行も出てきません。
言い換えの例:「うちの店は、買い物より居場所として使われている。その前提で相談したい」と最初に添える。前提を渡さないと、AIは前提ごと切り捨てます。
→ 関連する話:駄菓子屋のおばあちゃん、AIに「この立地では商売にならない」と閉店を勧められる。/豊臣兄弟、AIに「ナンバー2は代えがきく」と判定される。
最悪のケースを、条件に入れる
AIは「まだ起きていないこと」を計算に入れません。過去のデータに無いからです。だから平常時の効率で判断すると、備えのコストはすべて無駄に見えます。
三匹の子ぶたが「安く早く」を条件に家の材料を相談したとき、AIはレンガを「過剰投資」と判定しました。計算は正確です。ただし、その計算に狼はいませんでした。
言い換えの例:「もし◯◯が起きたらどうなるかも含めて比較して」と足す。トラブル・災害・急な退職など、確率は低いが起きたら困ることを自分から挙げるのがコツです。
→ 関連する話:三匹の子ぶた、AIに「レンガは過剰投資」と試算される。/織田信長、AIに「桶狭間は勝率2%」と止められる。
「誰が悪いか」ではなく「何が悪いか」を聞く
問いの立て方は、答えの形を決めます。原因を人に求める聞き方をすると、AIは律儀にその人の問題点を探し始めます。
生乾きのTシャツは「僕の何が悪いのか」と尋ねました。AIの答えは意外なもので、原因はTシャツではなく、干し方と洗濯槽にありました。もし「どうすれば早く乾く環境になるか」と聞いていれば、最初から答えは同じ場所を指していたはずです。
言い換えの例:「私のやり方の何がダメですか」ではなく「この結果を変えるには、どの条件を動かせますか」。直せる場所が見つかりやすくなります。
→ 関連する話:生乾きの洗濯物、AIに「臭いの犯人は君じゃない」と判定される。
答えが正しく見えたときほど、一度疑う
AIの答えは、たいてい筋が通っています。だからこそ危ないとも言えます。理路整然としているものを前にすると、人は「自分の感覚のほうが間違っているのかも」と思いがちです。
盆踊りの保存会長は「同じ振りの繰り返しは非効率」と指摘されました。データ上は正しい。でも、振りが単純なのは、初めての人でも三周まわれば輪に入れるようにするための設計でした。欠陥ではなく、いちばん賢い部分だったのです。
使えるひと言:「その結論の前提になっているデータは何か」「見落としている条件はあるか」。AIに自分の答えを点検させると、抜けが見えてきます。
→ 関連する話:盆踊り、AIに「同じ振りの繰り返しは非効率」と指摘される。/駄菓子屋のおばあちゃん、AIに「この立地では商売にならない」と閉店を勧められる。
まとめ:AIは、渡された条件の中でしか考えない
ここまでのコツは、突き詰めるとひとつのことを言っています。AIは渡された条件の中でだけ、とても優秀に考えるということです。条件から漏れたものは、悪意なく切り捨てられます。
だから、うまく使うために必要なのは難しい専門知識ではありません。「自分は何を守りたいのか」を、自分の言葉で先に渡すこと。それだけで、返ってくる答えはずいぶん変わります。
物語のかたちで読みたい方は、全エピソードからどうぞ。専門用語は使っていないので、AIを触ったことがない方でも読めます。